父と子と聖霊の御名によって　アーメン。

　喜びにあふれたクリスマスも終わり、主イエスの命名日（1月1日）、三人の占星術師がイエスを訪問したことを記念する顕現日（1月6日）と、イエスの成長を記念する祝日も終わりました。本日は一挙にイエスの誕生から30年ほどたった話になります。
  1年間でイエスの生涯をたどる教会暦ですので、聖書の中の出来事が交錯して現れることになります。
　
　先ほどお読みしました「ルカによる福音書」ではイエスが宣教活動を始められる前にヨハネから水による洗礼を受けられたことが語られました。
　ヨハネは先導者として、人々に罪の悔い改めのために水で洗礼を授けていました。
　以前にもお話ししましたが、ヨハネの洗礼の方法は、当時、人々の清めのために行われていた、眼を水面のすれすれまで顔を沈めるやり方だったのではないかと考えられます。水は低いところ低いところに流れていきます。その一番低いところに眼を置き世の中を見るということは、イエスが生涯にわたって貫かれたことでした。
　ヨハネはイエスについて「自分はその方の靴の紐をほどくにも値しない」と語ります。その自分よりも優れた方に、罪のない方にどうして洗礼を授ける必要があったのでしょうか？

    同じイエスの洗礼の場面が「マタイによる福音書」3章13節以下に記されています。それによるとヨハネが「わたしこそ、あなたから洗礼を受けるべきなのに、あなたが、わたしのところへ来られたのですか。」とイエスがヨハネから洗礼を受けようとするのを思いとどまらせようとします。
　しかしイエスは「今は、止めないでほしい。正しいことをすべて行うのは、我々にふさわしいことです。」といって洗礼を受けられるのです。

    つまりイエスはヨハネが行っていることを正しいこととし、自分も人として受ける必要があるといわれたのでした。この事は、イエスが神の子としてだけでなく、人の子としてもこの世に生を受けられたことの証でもあるのです。
　イエスが受けられた洗礼は水による洗礼でしたが、そのあと「聖霊（pneumaプネウマ、息、風）」が鳩のように下ってきて「あなたはわたしの愛する子、わたしの心に適う者」という声が天から聞こえてきたのでした。
　これはヨハネの言う通り、「わたしは水であなたたちに洗礼を授けたが、その方は“聖霊”で洗礼をお授けになる。」ということが実現したのでした。

    「聖霊」は目に見えないことが多いのですが、聖書の中では鳩、炎、油、風のようなかたちで現われます。
　聖霊の働きを聖書に記されていることからみてみますと、マリアが聖霊によって身ごもったように超自然的な働きがあります。また聖霊は私たちを教え、私たちに賜物を与え、私たちに語り、私たちを導き、神を証し、私たちと神との間のとりなしの働きをします。また私たちを教会を通して結びつける働きもあります。

    さて、私たちは洗礼を受けるとき、水で額に十字架の形を記して洗礼を受けます。私たちも「聖霊」による洗礼を受けたのでしょうか？祈祷書をお持ちの方は281ページをお開けください。

    私たちが洗礼を受けるとき、司祭は水の聖別をし「父と子と聖霊のみ名によって、あなたに洗礼を授けます」と言って額に十字架の形を記します。つまり洗礼を受けられた皆さんも「聖霊」による洗礼を受けられたのです。

　私たちが聖霊による洗礼を受けると言うことは、イエス・キリストと同じ立場に立って考え、行動していくということです。
　1年が始まったばかりです。もう一度洗礼を受けた時の感激を思い出し、幼児洗礼を受けられた方は初陪餐の時の感激を思い出し、今年１年の信仰生活をスタートさせましょう。